伝統俳句会

秣場吽公狂歌集

小渕(おぶち)涸(か)れ森(もり)は凋(しぼ)んで小泉(こいずみ)が田中(たなか)へ湧(わ)いて注(そそ)ぐ塩川(しおかわ)

　小渕恵三元総理。森喜朗前総理。小泉純一郎現総理。田中真紀子前外相。塩川正十郎前財務相。

　政治の世界は動きが激しい。

鱈腹(たらふく)と喰(く)えば必(かなら)ず鰤(ぶり)と出(で)る穴子(あなご)恥(は)ずかし河豚(ふく)と鰑(するめェ)

鱈・鰤・穴子・河豚・鰑ということで魚介尽くし。本場の下関では河豚(ふぐ)はフクと清音で発音する。穴はケツとも読む。最後はするめぇと訛って読んで戴きたい。

牡蠣(かき)喰(く)えば予(かね)て知(し)るなり瑞巌寺(ずいがんじ)肥後(ひご)八代(やつしろ)の海(うみ)は不知火(しらぬい)

熊本の居酒屋「喜多八」の女将(おかみ)が、牡蠣(かき)は熊本に限ると力説するので一首をもって応(こた)えた。

白(しろ)い糞(くそ)垂(た)れる鴉(からす)に罪(つみ)は無(な)く赤(あか)い嘘(うそ)つく人(ひと)腹黒(はらぐろ)し

丹波(たんば)の鶏騒動。皮肉(ひにく)なことに黒いカラスは潔白で、白い鶏を飼う人が一番狡猾(こうかつ)である。

浅草(あさくさ)のギター流(なが)しが爪弾(つまび)きし任侠(にんきょう)道(どう)の唄(うた)を忘(わす)れず

若い頃に交わった人たちを懐(なつ)かしく思い出すことがある。歳(とし)をとったということだろう。

新宿(しんじゅく)の路上(ろじょう)に暮(くら)す人(ひと)が詠(よ)む手淫(しゅいん)の歌(うた)の赤裸々(せきらら)を愛(め)づ

路上(ホー)生活者(ムレス)の文芸誌『露宿(ろじゅく)』を読んで作る。

籠池も鴻池でも泥腐り蓮一輪の花も咲かない

腐りきった行政には腐臭ぷんぷんとしている。

（歌人・三堀太聖氏との交流の記憶五首）

底知れぬ空の青さに挑むかに鳶は啼きつつ輪を描くなり

うぶすなの鎮守の森の静けさに椎の実落つる音を聴きをる

金色のつはぶきの花咲き初めて茅舎の狭庭華やぎにけり

身構へる蟷螂の眼の鋭きに草刈りゆくを暫したぢろぐ

薄墨の伊豆の島影冬がすみ沖に網曳くしらす舟見ゆ

高鼾かく寝姿をこちとらは海象などとつゆも思はじ

退職金もらえないのも幸せだ金が無いから離婚されない